こんてんつ
連続体力学を学ぶ上で重要な、変形勾配テンソルを導出する。
変形を論じる上で重要な4つの言葉の定義
変形勾配テンソルを導出する上で、変形を数式によって記述するが、その際に重要な4つの言葉を次に定義する。
時刻によって、二つの配置を定義する。
- 基準配置:例えば時刻などの、基準とする初期の状態のこと。
- 現在配置:例えば時刻などにおける、連続体が変形した状態のこと。
変形体に沿って観測するか、絶対座標で観測するかとして、二つのベクトルを定義する。
- 物質点:現在配置において、連続体を構成するすべて場所に対して一意に設定される点。一意に設定されるラベルという風に表現されることが多く、変形とは物質点同士の位置関係の変化である。
- 空間位置:変形体を傍から見た場合の位置のこと。現在配置でも基準配置でも、同じ軸を利用する。
時刻の基準配置では、物質点と空間位置は同じであるが()、変形が起こった後の現在配置ではであることに注意する。
運動の定義
時刻における、物質点の空間位置を次のように定義する。
この関数は、物質点の時々刻々とした位置を記述できることから「運動(motion)」などと呼ばれる。
変位勾配テンソルの導出
図の様に、基準配置における物質点とその隣り合う物質点間のベクトルをとして定義する。この時、変形前のため「」であることに注意する。これが、変形を経て現在配置ではに変化したと考えよう。これは、次のように考えることが出来る。
- 物質点が時刻で変形を経て、空間位置へ。
- 物質点が時刻で変形を経て、空間位置へ。
これを用いて、現在配置における位置の差は、
である。ここで、の周りのテイラー展開を考えて、
となる。参考までに、の周りのテイラー展開は、
である。以上より、
を得る。これより、の極限を考えて、
と書き、
を変形勾配テンソルと呼ぶ。改めて一つ前の式は、「物質点近傍の微分ベクトルがによって変換されてになる」ことを表している。このは物質点と時刻を変数に含み、「任意の物質点・任意の時刻における変形の様子を定量的に表す」ことが出来る。