平行軸の定理を使ってT字梁の断面二次モーメントを求める

こんてんつ

※本記事では厳密な一般解の証明までは出来ませんでした。数値的に定理から求められることを検証します。

T字はりの断面2次モーメントIの公式は、


\displaystyle
\begin{eqnarray}
&& I = \frac{1}{3}\{te_1^3 + be_2^3 - (b-t)(e_2-s)^3\} \\
&& e_1= d - \frac{d^2 t + s^2(b-t)}{2(bs+ht)} \\
&& e_2= \frac{d^2 t + s^2(b-t)}{2(bs+ht)}\\
\end{eqnarray}

などとして、与えられることをよく目にする。この式から出てくる値が、平行軸の定理からを利用して求められることについて解説する。

平行軸の定理

断面二次モーメントに関する平行軸の定理

梁曲げのたわみの計算式などでは、最小値となる図芯を通る断面二次モーメントI_zを用いる必要がある。これは、任意のz^{'}軸周りの断面二次モーメントI_{z^{'}}を求めた後、図芯までの距離の二乗{\bar{y}}^2に、断面積Aを乗じたものを引くことで求められる。平行軸の定理は次式である。


\displaystyle
I_z = I_{z^{'}} - ({\bar{y}})^2 A

(参考)高校力学における平行軸の定理

平行軸の定理は、高校物理学のモーメントの章にて登場している。質量Mの剛体の任意の軸のまわりの慣性モーメントIは、その軸と重心の距離をh、質量中心を通りその軸に平行な軸のまわりの慣性モーメントをI_Gとするとき、


\displaystyle
I = I_G + M h^2

で与えられる。

平行軸の定理を利用したT字梁の断面二次モーメントの導出

次のようなT字梁を設定する。 図芯を通る断面二次モーメントI_zは、任意のz^{'}軸周りの断面二次モーメントI_{z^{'}}から、平行軸の定理により図芯までの距離の二乗{\bar{y}}^2に、断面積Aを乗じたものを引くことで、


\displaystyle
I_z = I_{z^{'}} - ({\bar{y}})^2 A

で与えられる。ここで、I_{z^{'}}は断面二次モーメントの定義によって、


\displaystyle
\begin{eqnarray}
I_z &=& \int y^2 dA - ({\bar{y}})^2 A \\
&=& \left( \int_0^s y^2 \cdot  b dy + \int_s^d y^2 \cdot  t dy  \right)- ({\bar{y}})^2 A
\end{eqnarray}

となる。ここで、図芯までの距離\bar{y}は、断面一次モーメントとも呼ばれ、


\displaystyle
\bar{y} = \frac{\int y dA}{A} = \frac{ \int_0^s y \cdot  b dy + \int_s^d y \cdot  t dy } {A}

という形で表すことが出来る。以上より、


\displaystyle
\begin{eqnarray}
I_z &=& \left( \int_0^s y^2 \cdot  b dy + \int_s^d y^2 \cdot  t dy  \right)- \left( \frac{ \int_0^s y \cdot  b dy + \int_s^d y \cdot  t dy } {A} \right) ^2 A
\end{eqnarray}

という形で図芯を通る断面二次モーメントI_zを求めることが出来る。ここで、仮に


\displaystyle
\begin{eqnarray}
b &=& 100\\
d &=& 20\\
s &=& 10\\
t &=& 10
\end{eqnarray}

とすると、


\displaystyle
\begin{eqnarray}
I_z &=& \left( 33333.3 + 23333.3  \right)- \left( \frac{ 5000 + 1500 } {1100} \right) ^2 1100 \\
&=& 18257.5
\end{eqnarray}

となる。冒頭示した式との計算値とも一致し、平行軸の定理を使ってT字梁の断面二次モーメントを導出する式を示すことが出来た。